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ポリ画報通信

「ポリ画報」の活動、関連情報、ノート

講演会「ことばと出会う」   MATTERS OF ACT 創刊イベント

みたもの・きいたもの 雑感

 講演会やトークイベントをきっかけに自分で思ったことなど書きたいと思います。

 

ことばと出会う ぱくきょんみ講演会

2016.12.17  國學院大學

 

 これは國學院大學文学部の講演会で、《多言語・多文化の交流と共生》プロジェクトだそうです。お話しは、ぱくさんが出会ってきたものごと、人、本や映画など、朝鮮の民族芸術など、を語るもので、あいだに自作詩の朗読がありました。在日二世であること、女性であること、そういう自分として出会ってきたものごとたちが、ぱくさんにおいて多文化のネットワークとなっているようでした。

 お話しのなかで、詩は生きていくリズム、表現者は与える人、といった言葉があり、印象的でした。

 詩は生きていくリズム、というのは、詩を大きくとらえています。文学の一部門というのでなく、言葉の芸術とも限っていません。生きていく、という言い回しに、行動的・能動的なものであることが感じられます。いわゆる詩のリズムは、律動、韻律であり、あるいは、ふし(分節)としてあると思います。それらは、生きていくリズムから出てくるのだと思いました。例えば、赤ちゃんは大声で泣いていると、息を沢山吸ったり吐いたりして呼吸のリズムができて、自分が安定してくるらしいです。成長していくと、リズムがもっと複雑になるのだろうと思います。また、リズムの系がリズムを成していくリズムの階層構造、人生の季節のようなものもあると思います。生きていくリズムというのは、生きていく意志(意識)以前ですが、意志のもとみたいな感じがします。詩は生きていくことに内在しているということになります。

 しかし、それを詩として表現することは全く別のことです。表現者は与える人という言葉がそれをいっています。表現とは与えることだ、ということにもなります。これは、そういわれてみると当然のことでしょうか。しかし、自分のこととして考えてみるとなかなかたいへんなことだと思えます。この言葉は、ぱくさんの伽倻琴(カヤグム)の先生、池成子(チ・ソンジャ)さんについていわれたことで、池先生は120%180%与える人だということでした。与えるということは、深いところで供犠と関係あるような気がします。また、与えられた人は与え返すというあり方の経済と関係あるような気もします。与える人でありえているかというのは、欠かせない観点になりました。

 

MATTERS OF ACT : A Journal of Ideas 創刊イベント

石川卓磨、高嶋晋一、中井悠、橋本聡、松井勝正

2016.12.23  milkyeast

 

 アメリカで活動する中井悠さんが、No Collective というグループ、Not Already Yet という名義で雑誌をつくり、そこに出られた日本のアーティストとトークイベントを行ないました。雑誌名はMATTERS OF ACT で、今回のイベントでは、内容の紹介、ねらいに関することなど、話し合われました。何の雑誌か分からないようなものをつくる、逆に雑誌の編集によっておもてになかったものをあらしめる、というようなことだったかと思いましたが、そういう発想に共感しました。編集のセンスやキャパシティに基準となるものがないものをつくるという感じです。また、昨年日本にきてこちらの友達と会ったときの感触から、状況を活性化させる編集方針へシフトされたみたいで、意欲的な感じでした。

 今号は、フィクションということに関心をもって編集されたそうです。ポスト真実といわれる状況において、フィクションということをどう扱うかということを扱うことの戦略性は感じられる気がしました。言語行為論でいうパフォーマティブということも話しに出ていました。話し合いの途中で話し合いの仕方について話していく進め方にもそういう意識が感じられました。話している時間の長さの割合とかしゃべりあうテンポとか。そこで自分の話し方を意識的に変えてみるという試みもあって面白いと思いました。

 また、PC(政治的正しさ)という社会的な約束事みたいなものが実際どう機能しているのか、それをどう評価しどういう態度を取るのがいいのか、といったことについての議論は、中井さんのアメリカでの経験に基づいていて説得力があると思いました。また例えば、発言者が男性ばかりだということもいわれていました。そのことから何を考えられるか、ということは、あらためて考えるに値することであるように思います。

 本誌は年一回出すそうで、次号は未来をキーワードとして考えているそうです。このテーマの扱いもそう単純ではなく、時制をどう扱うかということを扱ったりするのかもしれません。中井さんは、本誌のみならず日本でまた別の雑誌が作られることも望んでいて、その積極性に立ち会えたことが、この会に行っていちばんよかったことでした。メディアをつくるという熱意や行動力に刺激をうけました。

 

(原牧生)