ポリ画報通信

「ポリ画報」の活動、関連情報、ノート

4月(即興と詩)

Fushigi N°5第三回公演 (ALOHA LOCO CAFE)
向坂くじら、橘上、永澤康太

 

 何かについての言葉であるよりも、それがその何かであるような言葉、そういうものが詩だと考えたい。詩の形式で書かれた言葉であるよりも、パフォーマティブな言語行為、言葉の出来事であること。Fushigi N°5の試みを、つよくいえば、こういう方が詩だと思ってみているが、もう少していねいに考えると、即興的な言葉のセッションのどこかで、詩を経験する、断面のようなものがあるのだと思う。例えば、始まりとか終わりとか移行のタイミングはそういうものかもしれない。確定されない経験。
 三人でやっていると、ニ対一になったり一対二になったりできる。例えば、三人で雑談しているところから一人が離れて詩的なモノローグを始める。異質なモードが並置され、意味が分からなくなる。あるいは、一人芝居みたいなものを二人で見て解釈のようなことをしゃべり合う。また、一人が朗読して二人はその言葉の断片を拾って即興的に発していく。また、一人を知らない人とみなして二人で質問する、などのセットがあった。見せる・見る関係の枠組みを作りにくいパフォーマンスが、そうすることで上演の構造になっていた。劇中劇みたいにもみえた。
 即興のなかで、意味を共有されない単語がでてきて、日本語の複数性ということを考えることもできたりした。

 

(原牧生)