ポリ画報通信

「ポリ画報」の活動、関連情報、ノート

vol.4 としての展示について。

Fools rush in where angels fear to tread.

(しらないくせして)

 

 TABULAE(タブラエ)の川原さんからお話をいただき、展示をすることにしました。それがポリ画報vol.4になります。

 はじめは批評性や政治性を直接感じさせるテーマをたててタイトルにすることも考えました。でも、いってることとやってることがともなわない展示ではよくないので、このタイトルにしました。当たり前のことかもしれませんが、テーマを考えることとタイトルを決めることは別のことだとあらためて思いました。

 Fools~は、英語のことわざで、しらないくせして、はその訳ではありませんが、対応があることをみせるつもりでカッコに入れています。手元の英和辞書には、Fools~の訳のことわざとして、めくらヘビにおじず、とありました。素朴な差別というか素直な差別といったものが感じられます。Fool(s)は、一言では訳しにくい語だと思います。例えば、ビートルズに「フールオンザヒル」という曲がありますが、これなどフールについての雰囲気が感じられます。フールは英語圏のナンセンスものを体現しているような存在で、フールを演じるものが道化ではないかと思います。フールは必ずしも特殊な存在ではなくて、エイプリル・フールはみんながフールになれる日です。四月馬鹿というと何だかよく分かりませんが案外面白い言葉になっている気もします。

 昔からあるポエティック・ライセンス(詩の特権)は、詩において文法上の破格などが認められていることとされていますが、その出どころは、フールということと言語との深いところでの関係にあるように思えます。

 フールがやることは広い意味で言語行為といえそうですが、その自分がやることを知らないからそれができるというようなことがあるのではないかと思います。タイトルの、しらないくせして、はそういう意味もあります。が、実は、英語をろくに知りもしないのに英語のタイトルを付けちゃっていいのか?と思っていまして、自戒をこめました。

 天使がおそれて立ち入らないところ、とはどういうところなのか、というのも謎々めいています。ことわざという誰のものともいえない表現がはらむ知恵が感じられます。

 タブラエというところは、細長い商店通りの奥の方にあって、一階には元は店だったような造りが残っていて、その裏と二階が住居になっているような建物(一軒家)です。今回の展示は、一階と二階まで使わせていただけるので、展示空間から居住空間まで入り混じっているような、ギャラリーとは異なる場所性があります。そして、展示会場をいくつかの性格の異なる展示領域に分けてとらえられます。それで、本と建築という観点から展示プランを立てています。単純にいえば展示領域が本の頁であるような。例えば、教会は昔(特に印刷技術以前)は、絵などを介して聖書の物語が読まれるところだったと思います。それは本としての建築(あるいは建築としての本)であり、建築の中を歩いたりみることを含めて身体が経験することが読むことだったと思います。今回の展示では、(はき物を脱いで)あがる、(奥へ)入る、(階段を)のぼる、のように行為される建物の空間を、本というメディアにすることを試みます。そして、展示の領域と領域は連続していない(自律的)、かつ、連続している(共通性がある)というふうにできているといいのですが…

 初めてタブラエに行く人は、なかなか着かないなあと思うかもしれません(私はそう思ったので)。インディペンデントな拠点をつくるというつもりで展示をいたします。ぜひおいでください!

 

TABULAE(タブラエ)  http://5484tabulae.tumblr.com/

 

(原牧生)