4月(俳句俳諧一行詩)
区立図書館が急に休館になり、借りていた本が手許に残った。『現代俳句全集 五』(1978、立風書房)。阿部完市の俳句に興味があり、この本を借りていた。
絵本の空(昭和37-43年) より
町への略図にある三日月と白いバス
他国見る絵本の空にぶら下り
起床してすぐに踊って風つくる
ローソクもってみんなはなれてゆきむほん
山々で指をかついでかくれんぼ
鞄に小枝つめて出かけるうれしい旅人
にもつは絵馬(昭和44-48年) より
静かなうしろ紙の木紙の木の林
糸でくくられつくられているAの町
はるかへかえる小さい沼をくるくるまわし
すきとおるそこは太鼓をたたいてとおる
鶴と白人とおいよひゆーひゆーあらわれる
あおあおと何月何日あつまるか
木から落ちるしずかにびわ湖に落ちる
Aへやまみち葉と葉と花子ちりながら
やくそくのときところともしびいろ松原
分かりやすい特徴として、ひらがなの多用、繰り返しの方法、五七五だけでない韻律感、などが目に付く。そして何か童話的な雰囲気とでもいうような軽さ、モダンな明るさが感じられる。言葉を使うことについての態度や姿勢からきているのだろうか。俳句というかたちでこんなことができるのかという驚き、このかたちの潜在力を感じる。
(原牧生)